「はいからさんが通る」外伝「霧の朝 パリで」のはなし。
なんとなく昨日Twitter(最近変態の話しかしてない)で、男性向/女性向の境目が無い感じってので思い出す話ってことでしのざき嶺さんの漫画の話を書いたんだけど、その後書いてからもう一本思い出してしまったので続くつもりは無かったんすが、書いてみたら猛烈に長くなったのでこっちにアップすることに。よければお付き合い下さい。以上前説。
「はいからさんが通る」の外伝「霧の朝 パリで」という読み切りのおはなし。
「外伝」ということで、ひとまずお話の前提。「はいからさんが通る」は本編の連載が終わった後、本編でヒロインと結ばれなかった男の人それぞれに新しくパートナーが出来るお話が描かれてるんですね。(その発想がまず凄い面白いし、作者の愛に満ちててたまらんですが)
そん中の一人で青江冬星さんという雑誌の編集長のキャラのエピソードです。
本編終了後、冬星はフランスのある小説家の作品の日本での出版契約を取り付けるために、パリに旅に出かける。そしてパリに着いた矢先、紅緒(はいからさんのヒロイン)とそっくりの少女に出会い、パリを案内してもらうことになる。しかし彼女がとんでもないタマだった。彼女は現地で有名なスリで、しかもまぁ話の流れでわかると思いますがw彼女とか書いてしまったけど、本当は(ターゲットを油断させるために)女装した男の子なんであった!彼の名前はペール。
思わず呆気に取られるしかない冬星だったが、ペールが身寄りの無い孤児であることを知り、パリに滞在している間、ホテルに住まわせてやることにする。やがて心を通わせて行く冬星とペール。
そして、まぁなんとも少女漫画なお話ですが、ペールが実は冬星が出版の契約を取り付けにきた作家の忘れ形見であることが判明する。しかし、ペールは引き取られるのに反対する。
ペールを説得する冬星。ペールは「トーセイがそう望むなら…」と心を決める。しかし続けて言う。
「だってトーセイにとって……」
「ぼくはパリにいるあいだだけのトーセイの愛してた人のかわりだったんだから…」
「さようなら……ロッシュ家にいきます……」
別れを告げて冬星の部屋を去ろうとするペール。
そこに冬星がかける言葉。
「ペール……」「これからは女のかっこうはよせ」
「どこかの男にほんきになられないともかぎらんからな」
微笑んで去っていくペール。
「ゆきずりの旅行者にこれいじょうなにができる……?」
「これでよかったのさ……」
「おれではあいつをしあわせにはできない」
必死に自分の心を納得させようとする冬星。
さて、ここからが「はいからさんが通る」の神展開。
そして冬星さんがパリを去る当日がやってきた。
パリの霧の朝、冬星さんはペールと出会った場所にふと足を向ける。
そこに声がひびく。
「アロー ムッシュウ」
振り向くとそこにはペールがいた。
出会ったあの日と同じ紅緒そっくりの女装姿で。
「ほんきになってよ ムッシュウ……」
******
こうして二人の心は結ばれるわけだが、もっとも衝撃的なのは、この後ついている後日談である。そのまま引用しよう。
「こうして……」
「異郷に結ばれたこの不可解な友情はペールが 冬星の養子となり春星と名のり」
「やがて春星が妻をむかえ 青江家をつぎ」
「やがて三十八さいの若さで冬星が没するまで続いたという」
(コマには冬星さんと談笑する大人になった女装ペールの絵。
書き文字「女装しゅみはなおらず」)
「兄弟のように
親子のように
友人のように」
「愛という
ひとつの
きずなに
つながれて
……」
なにこの話。おもしろすぎんぞこのやろー。
「はいからさんが通る」で女装と言えば蘭丸くんが有名なわけですが、こっちの話も結構すごい、っつうか、全体的に反体制的というかアブノーマルな感覚が割と散見するのに、非常に砕けたテイストで描かれているので、ついつい普通に読めてしまうのがおそろしい作品ですね。大好きです。勢いで書いてしまったので図版など気が向いたら後で追加します。
*ひとまず引用、収録元は講談社漫画文庫版「はいからさんが通る」4巻より。
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